「仕事を辞めたい。でも、上司に言えない」
退職する気持ちは固まりつつあるのに、いざ伝える場面を考えると怖くなることがあります。
忙しい職場で言い出しにくい。
上司に怒られそう。
同僚へ迷惑をかけそう。
引き止められたら断れる自信がない。
退職を伝えることは、普段の仕事ではあまり発生しないイベントです。慣れていなくて当然ですし、意志が弱いから言えないわけでもありません。
ただ、言えないまま時間が過ぎると、辞めたい気持ちを抱えたまま働く期間も長くなります。
この記事では、仕事を辞めたいと言えない時に確認したいこと、上司への伝え方、引き止められた時の対応、自分だけでは難しい場合の相談先を紹介します。
まだ退職するかどうかを決めきれていない方は、先に「仕事を辞めたいけど決められない時に整理したい5つの質問」で、現在の気持ちを整理してみてください。
退職を言い出せないのはおかしくない
退職を言い出せない理由は、人によって違います。
例えば、次のような不安があります。
- 上司から怒られそう
- 強く引き止められそう
- 同僚へ迷惑をかけそう
- 人手不足なので申し訳ない
- 退職理由を詳しく聞かれたくない
- 転職先が決まっていない
- 収入がなくなるのが怖い
- 退職を伝えたあとの職場に居づらくなりそう
- 「逃げた」と思われたくない
- 家族や周囲に反対されそう
仕事を辞めること自体より、伝えたあとの反応が怖くて止まっている場合もあります。
頭の中では、上司に怒られ、同僚から責められ、引き継ぎが炎上するところまで上映されがちです。まだ退職を伝えていないのに、脳内では最終決戦が始まっています。
まずは「退職したいのか」だけでなく、「何が怖くて言えないのか」を分けてみてください。
不安の正体が分かれば、必要な準備も見つけやすくなります。

退職を伝える前に確認したい5つのこと
何も決めないまま上司の前に立つと、不安がさらに大きくなります。
完璧な退職計画は必要ありませんが、最低限の情報を確認しておくと話しやすくなります。
1.退職する意思がどのくらい固まっているか
まず確認したいのは、退職を決めているのか、まだ迷っているのかです。
まだ迷っている場合は、いきなり「辞めます」と伝える必要はありません。
仕事内容、勤務時間、人間関係、異動、休職など、今の職場で調整できることを相談する方法もあります。
退職するかどうか以外の選択肢も整理したい方は、「仕事がしんどい時に確認したい6つの選択肢」も参考にしてください。
一方で、退職する意思が固まっているなら、相談ではなく意思表示として伝える準備をします。
「辞めようと思っているのですが、どうしたらいいですか」と相手へ判断を委ねると、引き止めの話になりやすくなります。
2.雇用契約に期間の定めがあるか
雇用契約に期間の定めがあるかどうかで、退職に関する扱いが異なる場合があります。
雇用契約書や労働条件通知書を見て、次のどちらに当てはまるか確認してください。
- 契約期間の定めがない無期労働契約
- 契約期間の定めがある有期労働契約
厚生労働省の案内では、無期労働契約の場合、法律上は退職を申し出た日から14日が経過すると退職になるとされています。
ただし、就業規則で合理的な退職手続が定められている場合もあるため、まずは会社のルールを確認し、可能であれば余裕を持って伝える方がトラブルを避けやすくなります。
有期労働契約は、原則として契約期間中の退職には「やむを得ない事由」が必要とされています。また、契約期間や働いた期間などによって扱いが異なる場合があります。
自分で判断するのが難しい場合は、会社だけでなく、公的な相談窓口や法律の専門家へ確認してください。
3.就業規則ではいつまでに伝えることになっているか
会社の就業規則に、退職手続や申し出る時期が記載されている場合があります。
例えば、次のような項目です。
- 退職を申し出る期限
- 最初に伝える相手
- 退職願や退職届の提出方法
- 引き継ぎに関するルール
- 貸与品の返却方法
就業規則は、社内システム、共有フォルダ、書面などで確認できる場合があります。
見つからない場合は、人事や総務へ「退職手続について確認したい」と問い合わせる方法もあります。
4.希望する退職日を考えておく
退職を伝える前に、希望する退職日を一度考えておきましょう。
次の予定を確認すると整理しやすくなります。
- 就業規則で定められた申し出の時期
- 給料の締め日
- 引き継ぎに必要な期間
- 有給休暇の残日数
- 転職先の入社予定日
- 退職後の生活費
- 健康保険や年金などの手続
希望日が決まっていないと、上司の都合だけで退職時期の話が進んでしまう場合があります。
必ず希望どおりになるとは限りませんが、自分の希望を持ったうえで話し合うことが大切です。
5.誰に、どのような方法で伝えるか
一般的には、まず直属の上司へ伝えます。
ただし、直属の上司が退職を言い出せない原因になっている場合や、ハラスメントなどの問題がある場合は、無理に二人だけで話す必要はありません。
次のような相手も候補になります。
- 直属の上司より上の責任者
- 人事や総務
- 社内の相談窓口
- 労働組合
- 外部の相談窓口
対面で伝えるのが難しい場合は、先にメールや社内チャットで面談の時間をお願いする方法もあります。

上司へ退職を伝える時の基本
退職理由を完璧に説明しようとすると、話すハードルが上がります。
まず必要なのは、長い説明ではなく、退職の意思と希望時期を伝えることです。
まずは話す時間を作ってもらう
ほかの社員がいる前や、上司が忙しい時間に突然伝えるのは避けた方が無難です。
メールや社内チャットでは、次のように面談をお願いできます。
今後の働き方についてお話ししたいことがあります。少しお時間をいただけないでしょうか。
この時点で、詳しい退職理由まで書く必要はありません。
結論から伝える
話す時間をもらったら、最初に結論を伝えます。
例えば、次のような伝え方です。
一身上の都合により、退職したいと考えています。○月末での退職を希望しています。
退職の意思が固まっている場合は、「辞めようか迷っています」ではなく、「退職したいと考えています」と伝えた方が話の軸がぶれにくくなります。
退職理由を詳しく話しすぎない
退職理由を聞かれることはありますが、すべてを詳しく話さなければならないとは限りません。
細かく説明すると、一つずつ反論されたり、条件を変えるから残ってほしいと説得されたりする場合があります。
詳しく話したくない場合は、次のように伝えられます。
今後の働き方を考えた結果、退職することを決めました。
個人的な事情もあるため、詳しい内容は控えさせてください。
会社への不満が理由でも、その場で今までの不満を全部並べる必要はありません。
退職の目的は、過去の判定会議ではなく、これからの手続を進めることです。
引き止められた時はその場で答えを変えなくていい
退職を伝えると、次のように言われる可能性があります。
- 今辞められると困る
- 後任が決まるまで待ってほしい
- 給料を上げるから残ってほしい
- 部署を変えるから考え直してほしい
- みんなに迷惑がかかる
- もう少し頑張ってみてほしい
条件が変われば残りたいと思うなら、一度持ち帰って考えても構いません。
ただ、すでに退職の意思が固まっているなら、相手を納得させるための新しい理由を探し続ける必要はありません。
お気持ちはありがたいのですが、退職の意思は変わりません。
ご迷惑をおかけしますが、退職に向けた手続を進めさせてください。
同じ内容を落ち着いて繰り返すだけでも大丈夫です。
人手不足や後任者の採用は、基本的には会社側が考える運営上の問題です。
可能な範囲で引き継ぎへ協力することは大切ですが、後任が決まるまで退職時期を決められない状態にすると、いつまでも辞められなくなる可能性があります。
口頭で伝えるのが難しい時は記録が残る方法も考える
対面で話すと何も言えなくなる場合は、伝えたい内容を先にメモへ書いておきましょう。
最低限、次の3点を整理します。
- 退職する意思
- 希望する退職日
- 今後の手続を確認したいこと
面談後は、話した内容や日時を自分用に記録しておくと、あとで認識の違いが起きた時に確認しやすくなります。
口頭で伝えても話を進めてもらえない場合は、退職の意思を書面やメールで伝える方法も考えられます。
一般的に「退職願」は会社へ退職の合意を求めるもの、「退職届」は退職の意思を明確に通知するものとして扱われることがあります。
ただし、実際の効力は書類の題名だけでなく、記載内容や提出時の状況によって判断される場合があります。一度伝えた退職の意思は簡単に撤回できないこともあるため、提出前に内容を確認してください。
会社が書類を受け取らない場合や、どの方法で伝えるべきか分からない場合は、自分だけで判断せず、公的な相談窓口や法律の専門家へ相談する方が安全です。

何も伝えずに突然行かなくなるのは避ける
退職を伝えるのが怖くても、連絡せずに突然出勤しなくなることはおすすめできません。
無断欠勤として扱われたり、会社から連絡が続いたり、必要な手続や書類の受け取りが遅れたりする可能性があります。
また、退職前後には次の対応も必要になります。
- 会社のパソコンや携帯電話を返却する
- 社員証や制服、鍵を返却する
- 必要な範囲で引き継ぎをする
- 私物を持ち帰る
- 離職票など必要な書類を確認する
- 健康保険証や資格確認書の扱いを確認する
- 会社のデータを勝手に持ち出さない
自分で出社するのが難しい場合でも、何らかの方法で退職の意思を伝え、貸与品の返却や必要書類の受け取りを進める必要があります。
自分だけでは伝えられない時に確認したい相談先
退職は自分で伝える方法だけではありません。
状況によっては、次のような相手や窓口へ相談できます。
会社の人事や相談窓口
直属の上司には言えなくても、人事や別の責任者には伝えられる場合があります。
上司との関係が原因になっているなら、無理に同じルートだけで進める必要はありません。
総合労働相談コーナー
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、解雇、雇止め、配置転換、賃金、いじめ・嫌がらせなど、幅広い労働問題について相談を受け付けています。
面談または電話で相談でき、利用は無料です。
退職を拒否されている、強い引き止めを受けている、会社との話し合いで困っている場合は、相談先の一つになります。
労働組合や法律の専門家
会社に労働組合がある場合は、退職手続や会社との話し合いについて相談できることがあります。
法的なトラブルがある場合や、会社から損害賠償を求めると言われた場合などは、弁護士や法テラスなどへの相談も検討してください。
退職代行サービス
どうしても自分から会社へ連絡できない場合は、退職代行サービスを利用する選択肢もあります。
ただし、退職代行には、民間企業が運営するもの、労働組合が関わるもの、弁護士が対応するものなどがあり、対応できる範囲が異なります。
料金の安さだけで決めず、自分の状況で何を依頼したいのか、会社との交渉や法的な対応が必要なのかを整理したうえで選ぶことが大切です。
サービスごとの違いや確認したい項目は、「退職代行サービスの選び方|民間・労働組合・弁護士の違いと注意点」で詳しく整理しています。

今日できる準備を一つだけ選ぶ
退職を伝えるのが怖い時に、すべてを一日で進める必要はありません。
まずは、次の中から一つだけ選んでください。
- 雇用契約書を確認する
- 就業規則の退職手続を確認する
- 希望する退職日をカレンダーに書く
- 上司へ面談をお願いする文章を作る
- 退職理由を一文にまとめる
- 人事や相談窓口の連絡先を確認する
- 退職後に必要な生活費を計算する
退職を言い出せない状態から、いきなり上司へ話しに行かなくても大丈夫です。
まず装備を確認する。地図を見る。相談できる仲間を探す。
それも立派な一手です。
人手不足や周囲への申し訳なさを、全部自分一人で背負う必要はありません。
今日決めるのは、退職を完璧に成功させる方法ではなく、退職を伝えるための準備を一つ進めることです。

